手術が必要なのはどんな場合か — 正直な判断基準

非手術の可能性を追求しながら、手術が本当に必要なケースを正直に解説。腱板断裂・バンカート・SLAP・ラタルジェ手術。

李東奎 院長·読了時間 13分

プラチナムクリニックは非手術治療専門クリニックです。しかし「手術をさせないために何でも非手術で対応する」クリニックではありません。非手術治療の限界を正直に認め、手術が必要なときに「手術をしてください」と言えること——これが本当の誠実さだと考えています。

1. 腱板全層断裂

条件説明
広範囲断裂断裂サイズ5cm以上、2本以上の腱の断裂
急性外傷性断裂事故や転倒で突然発生した断裂
若い患者様+高活動50歳未満、アスリート、肉体労働者
筋肉の萎縮・脂肪変性の進行MRIで筋肉が脂肪に変わり始めている
保存治療の失敗3〜6ヶ月の非手術治療でも改善なし

手術方法:関節鏡的腱板縫合術

  • 全身麻酔または部位麻酔
  • 手術時間:1〜2時間
  • 入院期間:1〜3日
  • 装具(スリング)着用:4〜6週必須
  • 再断裂率:研究によって13〜94%と報告(高齢・大きな断裂では高い)

2. バンカート病変(Bankart Lesion)

肩が脱臼したときに関節唇の前方が断裂した状態。これが損傷すると肩が繰り返し抜けるようになります。

条件説明
反復性脱臼2回以上肩が抜けた場合
若い患者様(30歳未満)初回脱臼後の再脱臼率が70〜90%と非常に高い
アスリート・高活動コンタクトスポーツ・オーバーヘッド運動を継続希望
不安定感の持続脱臼まではいかなくても「抜けそうな感じ」が続く

手術方法:関節鏡的バンカート縫合術

  • 縫合アンカーを骨に打ち込み、断裂した関節唇を元の位置に固定
  • 手術時間:1〜1.5時間、入院:1〜2日
  • スポーツ復帰:非コンタクト4〜6ヶ月、コンタクト6〜9ヶ月
  • 術後再脱臼率:5〜15%

3. SLAP病変

上方関節唇の前後方向の断裂です。この部位には上腕二頭筋長頭腱が付着しており、二頭筋の問題と合併することが多いです。

分類特徴
Type I退行性変化・摩耗(手術不要)
Type II二頭筋付着部が不安定に剥離(最多、手術を考慮)
Type IIIバケツ把手型断裂(手術が必要)
Type IVType III+二頭筋腱への断裂延長(手術が必要)

4. ラタルジェ手術(Latarjet Procedure)

肩が繰り返し脱臼すると関節窩(肩のソケット)前面の骨が削れる(骨欠損)。骨欠損が大きければ通常のバンカート縫合術では不安定性を解決できません。烏口突起(coracoid process)を切り取って関節窩前面に移植する手術です。

条件説明
骨欠損>20%関節窩前面の骨が20%以上消失
バンカート縫合術の失敗縫合術後も再脱臼が発生
多発性脱臼(5回以上)骨損失が大きい可能性が高い
コンタクトスポーツ選手ラグビー・アメフトなど高リスクスポーツ

手術が必要なケース一覧

疾患名主な適応手術方法リハビリ期間
腱板全層断裂広範囲・急性外傷・若い高活動関節鏡的縫合術6ヶ月〜1年
バンカート病変反復脱臼・若い患者・運動選手関節鏡的縫合術4〜6ヶ月
SLAP病変Type II以上・保存治療失敗・投手SLAP縫合または二頭筋固定術6〜12ヶ月(投手)
ラタルジェ骨欠損>20%・縫合術失敗烏口突起移植術6〜9ヶ月

よくある質問

Q1. 全層断裂があれば必ず手術ですか?

いいえ。全層断裂でも断裂サイズが小さく(3cm未満)、痛みが主症状で日常生活への支障が少ない場合は、非手術治療で十分に管理できます。

Q2. 肩が一度脱臼したら、すぐに手術が必要ですか?

初回脱臼後に即座に手術が必要なわけではありません。ただし、20代以下の若い患者様では再脱臼率が70〜90%と非常に高く、活動水準を考慮して早期手術を推奨する場合もあります。

Q3. SLAP病変はMRIで確実に診断できますか?

感度は60〜80%程度で、正常と判断されてもSLAP病変が存在することがあります。MR関節造影(MRA)がより正確で、確定診断は関節鏡によって行われます。

Q4. 術後も非手術治療は必要ですか?

はい。手術は構造を修復するものであり、機能を回復させるのはリハビリです。術後の理学療法・運動療法は必須です。

非手術治療の限界を認識すること。手術が必要なとき、正直に言えること。それが患者様への真の誠実さです。

手術が必要か、非手術で可能かを正直に評価します

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李東奎 院長

李東奎 院長

延世大学校医学部卒 · 整形外科専門医 · IBSE認定 · 特許4件

かつて手術専門医として活躍し、非手術治療の可能性を追求するために転向。肩手術の限界を自身の経験から痛感し、プラチナムクリニックを設立。著書『肩の痛み 手術より運動』著者。

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