40代の女性が、腱板断裂の治療開始から2ヶ月後に「もう痛くないので治療をやめたい」と来院しました。
先生、最近は全然痛くないんです。日常生活もほとんど問題ないし、もう治ったと思うんですが…治療を続ける必要はありますか?
超音波で確認すると:開始時に60%あった断裂が、現在は35%に縮小。改善していますが、まだ修復途中でした。
「痛みが消えた」と「断裂が修復された」は全く別のことです。
無症状断裂という現実
- ✓一般人口の22.1%に腱板断裂が存在する(Yamamoto 2010)
- ✓腱板断裂全体の65%は無症状(Minagawa 2013)
- ✓60歳以上では50%以上に何らかの断裂が存在する
- ✓断裂があっても、脳が「痛み」として認識しないことがある
痛みは「断裂の大きさ」ではなく「炎症の程度」に依存することが多いです。炎症が治まれば痛みは消えますが、断裂自体は残っています。
痛みが消えると何が起きるか
- ✓「治った」と思って治療を中断する
- ✓以前の活動に急に戻る(運動・重労働など)
- ✓修復途中の腱板に過度な負荷がかかる
- ✓断裂が再び拡大する
- ✓また痛みが出て再受診——これが「再発」のパターン
治療終了の3つの基準
- ✓基準1:超音波で断裂サイズの縮小が確認できている
- ✓基準2:筋力評価で腱板周囲筋が十分に回復している
- ✓基準3:日常生活・スポーツ動作を正常に行えている
腱板修復に必要な時間
- ✓炎症期(0〜4週):炎症・腫れ・痛みが強い。炎症を抑えることが優先
- ✓増殖期(4〜12週):新しいコラーゲン線維が作られ始める。まだ強度は低い
- ✓リモデリング期(3〜6ヶ月):コラーゲンが整列・成熟し、強度が回復する
多くの患者様が「増殖期」に痛みが消え、治療を終了してしまいます。しかし腱板が十分な強度を回復していない段階で治療をやめると、再断裂のリスクがあります。
この患者様への対応と経過
超音波の結果を見せながら説明しました。
まだ修復途中です。断裂は35%に縮小しましたが、腱板がフルの強度を持つにはあと3〜4ヶ月かかります。今やめると、また断裂が拡大するリスクがあります。
患者様は治療継続に同意され、さらに3ヶ月後:断裂60%→35%→15%に縮小。筋力は健側の90%に回復。この時点で治療終了し、その後再発はありませんでした。
あのとき先生に説明してもらって良かったです。やめていたら、また同じことになっていたかもしれません。
よくある質問
Q1. 治療をどれくらい続ける必要がありますか?
通常3〜6ヶ月の治療期間が必要です。その後も超音波で経過確認を行い、断裂の安定を確認してから治療を終了します。
Q2. 痛みがないのに続けるのは意味がありますか?
はい。痛みが消えてからが本当の修復の段階です。超音波で修復の進行を確認しながら、腱板が十分な強度を回復するまで継続することが、再発防止に最も重要です。
Q3. 完全に「治る」ことはありますか?
大きな断裂が画像上「ゼロ」になることは難しいですが、「機能的に回復する(痛みなく日常生活を送れる)」ことは十分に可能です。
治療終了のタイミングを一緒に判断しましょう
ご予約はこちら李東奎 院長
延世大学校医学部卒 · 整形外科専門医 · IBSE認定 · 特許4件
かつて手術専門医として活躍し、非手術治療の可能性を追求するために転向。肩手術の限界を自身の経験から痛感し、プラチナムクリニックを設立。著書『肩の痛み 手術より運動』著者。