40代の男性会社員が3ヶ月間、右肩の痛みで悩んでいました。夜間に肩が痛んで眠れず、腕を上げると引っかかる感じがします。近くの整形外科でX線とMRIを撮りましたが、「異常なし」と言われました。
MRIで何も見つからなかったのに、なぜこんなに痛いのでしょうか。気のせいですか?
このような方は珍しくありません。「MRI正常なのに痛い」——これには明確な理由があります。
MRIで映らない病変1:微小石灰
石灰沈着性腱炎の初期や小さな石灰は、MRIに写らないことがあります。石灰はX線・超音波では明確に確認できますが、MRIでは「信号の欠落」として現れるため、読影の経験が少ない場合は見落とされることがあります。
特に「粉状の石灰(吸収期)」は最も痛みが強いにもかかわらず、画像には写りにくい特徴があります。これは石灰が溶け出して周囲に炎症を起こしているためです。
MRIで映らない病変2:微小腱板断裂(ごく小さな部分断裂)
腱板のごく小さな部分断裂(特に関節面側の断裂)は、MRIでは見落とされることがあります。MRIの解像度には限界があり、数ミリの損傷は「正常範囲内」として読影されることがあります。この場合、超音波の方が診断精度が高いことがあります。
MRIで映らない病変3:滑液包炎
肩峰下滑液包(肩の上部にある袋状の組織)の炎症は、MRIでは見えにくいことがあります。超音波では滑液包内の液体貯留・炎症を鮮明に確認できます。
「火種と炎」の比喩
肩の痛みを火に例えると、わかりやすくなります。
- ✓火種(原因):石灰・断裂・滑液包炎など
- ✓炎(症状):痛み・夜間痛・運動制限
MRIは「大きな炎」は捉えられますが、「小さな火種」は見逃すことがあります。火種が残っている限り、炎はいつでも再び燃え上がります。
症例:MRI正常、でも微小石灰があった
プラチナムクリニックに来院された50代の女性は、3ヶ月間夜間痛に悩んでいました。他院でのMRIは「異常なし」。しかし超音波で評価すると、約3mmの微小石灰が腱板内に確認されました。
さらに詳しく見ると、石灰の周囲に炎症反応(滑液包への石灰漏出)が起きていました。「粉状の石灰が溶け出して周囲に炎症を起こしている状態」——最も痛みが強い吸収期の石灰沈着性腱炎でした。
MRIで異常なしと言われたとき、本当に絶望しました。自分の痛みが嘘のように言われている気がして。でも原因がわかってホッとしました。
治療:関節水液拡張術 + 石灰分砕吸入術
この患者様には、関節水液拡張術と石灰分砕吸入術を組み合わせて治療しました。
- ✓関節水液拡張術:関節内に生理食塩水を注入して炎症を抑え、石灰周囲の圧力を下げる
- ✓石灰分砕吸入術:超音波ガイド下に石灰を砕いて吸引除去する
1週間後、夜間痛はほぼ消失。3週間後には腕を頭上まで上げられるようになりました。
よくある質問
Q1. MRIで異常なしと言われたら、もう受診しなくていいですか?
いいえ。MRIは万能ではありません。症状が続く場合は、超音波による精密評価を受けることをお勧めします。
Q2. 超音波はMRIより精度が低いですか?
そうではありません。肩の腱板評価においては、熟練した医師が行う超音波の診断精度はMRIと同等かそれ以上とされています。特に石灰の状態評価や小さな部分断裂の発見では、超音波の方が優れています。
Q3. 痛みが強くないなら、様子を見てもいいですか?
症状の程度によります。ただし、石灰沈着性腱炎や腱板断裂は放置すると悪化することが多いです。「今は我慢できる」状態でも、早めに原因を特定しておくことをお勧めします。
超音波による精密評価を受けてみてください
ご予約はこちら李東奎 院長
延世大学校医学部卒 · 整形外科専門医 · IBSE認定 · 特許4件
かつて手術専門医として活躍し、非手術治療の可能性を追求するために転向。肩手術の限界を自身の経験から痛感し、プラチナムクリニックを設立。著書『肩の痛み 手術より運動』著者。