肩の石灰沈着性腱炎や腱の損傷、筋肉断裂などで治療が必要な際に病院を受診すると、X線や超音波、MRIの撮影を勧められることが多くあります。この際、MRIを撮影するのが最も正確に把握できると考える患者さんもいらっしゃいますが、肩の石灰沈着性腱炎の治療時や五十肩、腱板断裂など肩が痛い場合に、必ずしもMRIを撮影しなければならないわけではありません。 では、いつ、どのように対処すれば適切な治療を受けられるのでしょうか? つい先日、腱板断裂の治療を継続的に受けても症状が改善されず、当院を受診された患者さんがいらっしゃいました。 以前の病院でMRI撮影の結果、腱板部分断裂があるとの診断を受け、 治療のために高額な再生注射を7〜8回繰り返したにもかかわらず症状の改善が見られず、やむを得ず当院を受診されました。 まず、この患者さんのX線とMRI画像を確認してみましょう。

X線画像では、まったく問題のない正常な所見が認められました。

MRIを確認すると、黄色の点線内に示された棘上筋の部位で、矢印で示された箇所がやや白く見える所見が認められます。これは棘上筋内に炎症所見があることを示しており、これを部分断裂と診断して再生注射治療を行ったものと考えられます。 しかし、このMRI所見では単純な炎症程度と考えられ、断裂には至っていないものと思われます。 ある程度の時間が経過していたため、超音波検査により改めて確認することにしました。

この超音波画像では、棘上筋を長軸方向に撮影しています。黄色の点線内の矢印で示された部位を見ると、白い点が2つほど認められ、これが石灰です。1mm にも満たない小さな微細石灰であり、その周囲の腱が黒く変化しているのが認められます。超音波上、腱は白く見えるのが正常ですが、その周囲が黒く見えるのは炎症があることを意味します。

この超音波画像は棘上筋の短軸断面を撮影したもので、上の画像と同様に、黄色の点線内の矢印で示された部位に石灰が認められ、その周囲が黒く変化しているのが認められます。 すなわち、この患者さんの場合、微細な石灰による棘上筋の炎症が強く生じていたものと判断され、体外衝撃波治療を5回程度施行した後、症状が改善されました。 このように微細な石灰が存在する場合、X線では認められないことが多く、MRIの場合は4mmスライス間隔で検査が行われるため、4mm未満の石灰は発見できないことがあります。 超音波の場合、術者が機器を動かしながら腱全体をリアルタイムで検査するため、超音波の解像度が高く、術者の経験が豊富であれば、MRIではなく超音波によって肩の石灰沈着性腱炎を発見し、具体的な治療を進めることができます。 別の患者さんの症例もご覧いただきます。 今回ご紹介する患者さんは、MRI検査後に腱が断裂しているとの説明を受け、手術を勧められた症例です。 患者さんは手術による治療を行う前に、もう一度確認したいと当院を受診されました。 それでは、X線とMRI画像を確認してみましょう。

X線では正常な所見が認められます。

MRI上、棘上筋の部位において、正常であれば黒く見えるべき腱が白く見えており、強い炎症所見が認められます。これを重度の腱症(腱の脆弱化)と判断し、その修復術(縫合術)を勧められたものと考えられます。 しかし詳しく見ると、MRI上で棘上筋内に小さな黒い点が見られ、微細な石灰と考えられます。そこで超音波検査により改めて確認することにしました。

超音波画像で確認すると、黄色の点線内の矢印で示された部位に白い点が3つ認められ、その周囲が黒く変化しているのが認められます。すなわち、微細な石灰による炎症が非常に強く生じているものと判断されます。 この患者さんの場合も、体外衝撃波治療を7回施行した後、症状が改善されました。 ある程度の大きさの肩の石灰沈着性腱炎であれば、X線だけで十分に診断することができます。 しかし、サイズの小さい微細石灰の場合、X線では描出されないことがあります。 多くの方が肩の石灰沈着性腱炎の治療には必ずMRIを撮影しなければならないとお考えですが、 MRIは4mm間隔でスライス撮影が行われるため、4mm未満の石灰については見落とされる場合が 生じることがあります。 このような場合、解像度が高い超音波と超音波の経験豊富な医師のもとで肩の石灰沈着性腱炎の治療を行う場合、微細石灰のような小さな石灰も発見することができ、石灰の性状(形成期の硬い石灰なのか、吸収期のチーズ状の石灰なのか)を鑑別することもでき、治療方針の選択において非常に有用な検査であると考えられます。

