肩腱板断裂治療の真実と誤解 肩腱板断裂がある場合、断裂の大きさや様式によって治療の方針が異なります。 断裂の種類は全層断裂と部分断裂に分類されますが、 断裂の大きさが大きい全層断裂の場合、保存的治療は効果的ではなく、手術的治療を行うことが望ましいです。 比較的断裂の大きさが小さく症状が軽度な部分断裂は、大きく2種類に分類でき、 関節面側腱板の断裂と滑液包側腱板の断裂に区別されます。

画像の上側が関節面側腱板の断裂であり、断裂の厚さによってグレードが分類されます。 下側は滑液包側断裂の分類です。 通常、関節面側断裂の場合、ほとんどが保存的治療で改善が期待できます。 この際に行える治療としては、プロロセラピー(靭帯増殖注射、DNA注射、PDRN注射、リジェンシル注射など)、体外衝撃波治療、リハビリテーション治療などがあり、損傷の程度が軽度であれば、こうした保存的治療を通じて組織を治癒させ、肩の機能を回復させることができます。 一方、滑液包側断裂の場合、損傷の程度が軽度であれば保存的治療を行うことができますが、中等度以上の断裂が進行している場合は手術的治療を行うことが望ましいです。 また、断裂の大きさが6mm以上に進行している場合も、手術的治療を行うことが望ましいです。 今回の患者様は、約2年間の肩の疼痛により他院で超音波検査を通じて右肩腱板断裂の診断を受け、 複数回のプロロセラピーおよびPIMS(?)治療を受けたとのことでした。患者様は来院のわずか1週間前まで 上記の治療を受けたとのことで、すでに10回以上の治療を受けている状況でした。 しかし、肩腱板断裂の治療を繰り返しても症状が改善せず、疼痛がさらに増悪したため、当院を 受診されたとのことでした。 まず正確な診断のために、理学的検査および超音波検査を実施しました。

棘上筋の超音波検査において、全層にわたって断裂し完全に離断した像が観察され、その間に大量の炎症性滑液が確認されました。大量の炎症性滑液により疼痛が極めて強く、腕をまともに使用できない状態で肩関節の機能が著しく制限されていました。

棘下筋も断裂しており、本来の厚さよりもかなり菲薄化しており、大量の炎症性滑液が確認されました。 患者様の状態を総合的に診断した結果、棘上筋の全層断裂、棘下筋の滑液包側断裂(グレードIII)であり、手術的治療が必要な状態でした。 このような肩腱板断裂においても、保存的治療は効果的なのでしょうか? 患者様が受けたというPIMS治療が馴染みのない治療であったため調べたところ、「損傷した筋肉・靭帯に反復的な刺激を加えることで血流量を回復させ、神経伝達物質の分泌を通じて疼痛をコントロールする治療」とのことでした。つまり、損傷した組織を治癒させる治療というよりも、「疼痛コントロール」を目的とした治療に近いと考えられます。 では、なぜこのような治療が行われたのでしょうか? 他院で肩腱板断裂の治療としてPIMS治療が行われた理由は、2つ考えられます。 1つ目は、超音波で肩腱板断裂を診断した際に正確な診断が得られず、保存的治療が行われた可能性です。以前にも述べたように、超音波検査は施術者の熟練度によって結果が異なるため、明確に診断されないことがあります。 最初から診断が誤っていたため、治療が適切に行われなかったということでしょう。 2つ目は、当初は軽度の肩腱板断裂であったため保存的治療を行ったものの、適切に治療されず増悪した可能性も考えられます。効果的でない保存的治療により、腱板の断裂が悪化した可能性があるのです。 この患者様のMRI画像も確認してみましょう。

MRI画像においても超音波画像と同様に、棘上筋の全層断裂、棘下筋のほぼ全層断裂に近い滑液包側断裂が観察され、相当量の炎症性滑液が確認されたため、手術的治療が必要な状態と判断されました。

実際の関節鏡画像において、肩腱板断裂が高度に進行し、退行性変化が生じていることが確認されました。

退行性変化が進行し、すでに損傷が高度な腱板を整理したうえで、上腕骨に腱板を付着させるための処置を行いました。

断裂した腱板を縫合するためのスーチャーアンカーを固定しました。

患者様の場合、腱板の状態が非常に不良であり、元の腱板のみで縫合した場合には再断裂のリスクがあるため、 人工腱板(メガダーム)を使用してダブルロー縫合法でしっかりと固定しました。 肩腱板断裂を治療する際に、保存的治療を効果的に行うためには、正確な診断が不可欠です。 診断が明確であるほど、治療効果を高めることができます。 効果的な保存的治療としては、 1. 正確な注射治療:損傷した腱板に適切に薬剤を投与するためには、超音波ガイド下での注射治療が必要です。 2. 適切な物理療法:組織の血流改善および炎症反応の軽減に有効です。 3. 専門的なリハビリテーション治療:損傷した腱板周囲の筋肉の機能回復および強化が必要です。 また、肩腱板断裂の治療において手術が必要な場合、保存的治療をいくら行っても、結局「ざるで水をすくう」ような治療にしかならないため、全層断裂や滑液包側断裂がある場合、あるいは6mm以上の断裂がある場合には、手術的治療を行うことがより早期に回復できる方法です。

