
何の異常もなかった肩がある日突然激しく痛み始めた場合、肩の石灰沈着性腱炎が疑われます。 肩の石灰沈着性腱炎とは、肩の腱部位にカルシウムが徐々に蓄積し、 次第に硬い石のように石灰化するとともに、肩に炎症と疼痛を引き起こす疾患です。 実際、石灰沈着性腱炎は肩だけでなく、体の中で腱が存在する部位であればどこにでも発生し得ますが、 主に肩に多く発症します。 数ヶ月から1年以上にわたって肩の痛みに悩んでいるにもかかわらず、正確な原因が見つからない場合は、 肩の石灰沈着性腱炎を疑ってみることができます。

肩の石灰沈着性腱炎の代表的な症状にはどのようなものがあるでしょうか?
1) 外傷や過度な肩の活動がないにもかかわらず、突然肩に激しい疼痛が発生する 2) 肩の痛みは夜間に増悪し、患側を下にして横になれないため、睡眠が困難になる 3) 肩の痛みで1年以上治療を続けているが、改善せず疼痛が慢性化している 4) 上腕と肩が接する部位を押すと疼痛がさらに悪化する 上記の症状のうち1つでも該当する場合、肩の石灰沈着性腱炎を疑うことができます。 腱の周囲にある程度の石灰化があるからといって、必ずしも強い肩の疼痛が生じるわけではありません。 肩に石灰が蓄積していても、炎症反応を引き起こさなければ肩の症状が現れないこともあります。 肩の石灰沈着性腱炎の主な症状は、外傷などの特別な原因なく突然訪れる激烈な肩の疼痛です。 ただし、石灰がある程度沈着するまでの長い期間は、疼痛をはじめとする その他の症状がほとんど現れません。
肩の石灰沈着性腱炎の疼痛は、石灰がある程度蓄積して 硬い石のようになった後、徐々に溶け始めるときに最も強くなります。 体が石灰を除去しようとして石灰周囲に新生血管を形成し、 活発な炎症反応が生じることで肩周囲の疼痛が極めて強くなります。 肩の石灰沈着性腱炎を発症すると、激しい疼痛により生活の質が低下します。 疼痛が強い場合は夜間に睡眠が妨げられることもあり、刺すような疼痛により救急外来を受診するほどになることもあります。 肩の石灰沈着性腱炎の発症初期には、薬物療法や理学療法などで症状を改善することができます。 しかし石灰形成が慢性化し、肩関節内で炎症反応が持続的に生じる場合は、 石灰破砕吸引術や体外衝撃波療法などによって石灰を除去する根本的な治療が必要となります。 肩の石灰沈着性腱炎は、疼痛の原因である腱部位の炎症を緩和し、 損傷した腱の再生治療とともに 石灰を除去することで、再発なく確実に治癒させることができます。 肩の疼痛の程度・期間、および石灰の大きさに応じて治療法を決定します。 まず、石灰があっても疼痛がないか軽微な場合は、ほとんどの場合、消炎鎮痛薬を服用しながら、 体外衝撃波療法や徒手療法などの理学療法を含む保存的治療によって疼痛を改善することができます。
しかし、石灰の塊が1〜2cm以上あり肩の疼痛が強い場合、1年以上疼痛が持続する場合などは、 保存的治療では効果が得られないため、特殊な針を用いて石灰を細かく砕いて 除去する根本的な治療が必要となります。 石灰破砕吸引術は、注射針で石灰を穿刺して細かく破砕し、清潔な医療用生理食塩水を注入して 腱周囲を洗浄し、細かく破砕された石灰を吸引することで腱から石灰を除去する治療法であり、 肩の石灰沈着性腱炎の手術と比較して施術時間が比較的短く、根本的に石灰を除去できる 効果的な治療方法です。
この方法は、肩の石灰沈着性腱炎の手術術式である関節鏡視下手術から着想を得た、非手術的な石灰沈着性腱炎の治療法です。 石灰の性状によっては、チーズのように引き出せる場合もあり、硬い石灰の場合は 細かく破砕してチョークの粉のようにシリンジで吸引して除去することもあります。 ただし、石灰破砕吸引術では腱に挟まった石灰をすべて除去することは困難です。 なぜなら、石灰は腱の中にきれいに沈着するのではなく、腱の組織の間に 細かく入り込んだ状態で沈着しているため、腱内の石灰をすべて除去してしまうと 健常な腱組織まで損傷する恐れがあるからです。 石灰破砕吸引術によって可能な限り石灰を破砕し、シリンジで破砕した石灰を吸引し、 周囲組織を十分に洗浄したうえで損傷した腱の再生治療まで行えば、 石灰破砕吸引術の治療は終了となります。
縁に残存した残余石灰が自然吸収されるよう、体外衝撃波治療を行う必要があります。 体外衝撃波は衝撃波エネルギーを疼痛部位に伝達することで血管新生および血流量を増加させ、 症状を改善するとともに損傷組織の再生に優れた効果を発揮するため、石灰破砕吸引術後に 残存石灰の細胞への吸収を促進し、腱への血流量を増加させるのに有効です。 石灰破砕吸引術は、石灰が注射針で吸引するには小さすぎる場合や症状の程度が重くない場合、 あるいは反対に疼痛が非常に強く石灰のサイズが大きいものの、肩の石灰沈着性腱炎の手術に 抵抗がある場合などに実施を検討することができます。 このように肩の石灰沈着性腱炎は、手術によらなくても効果的な非手術的治療によって 治癒させることができますので、症状を悪化させる前に積極的に治療を受けられることをお勧めします。

